インタビュー・座談会卒業生に聞く、在学生が語る

先生になりたい―ここにはもっと、そう思える学びと体験が待っていた。

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後藤 理央さん 神奈川県立特別支援学校教員採用試験合格
井出 廉也さん 神奈川県立高等学校教員採用試験合格
小林 優太さん 横浜市立小学校教員採用試験合格
萱野 里奈さん 横浜市立中学校教員採用試験合格
※左上から時計回り

小学校教員への学習を入口に、自分が目指す方向を決めていく

—————はじめに、学校教員を目指した理由を聞かせてください。

井出:僕は小学生の頃から、おしゃべりしながら友達に勉強を教えるのが大好きだったんです。以来、「教えるって楽しいな」という思いがずっと消えず、教員を目指すことになりました。

萱野:私は、中学3年生の時の担任の先生に憧れて教員を目指しました。社会科の先生だったんですが、クラスの運営が上手で、授業も教科書+αの話を交えて知識欲を深めてくれました。

後藤:私には知的障がいがある弟がいます。弟を支えてくださる先生たちに憧れて、特別支援学校の教師を目指しました。成長期に密度高く、長時間子供と一緒に過ごすという意味でも、先生は責任ある重要な仕事だと思いました。

小林:僕は小学4年生の時の新任の先生が熱血漢で、カッコいいなと思っていました。実は、僕の祖父も教員だったんです。教え子たちから慕われていて「先生っていい職業だな」と感じたことが、教員志望につながりました。

—————なぜ横浜国立大学教育学部を選んだのでしょうか?

後藤:私は、地元の神奈川県で教職に就きたいと思っていました。高校の担任の先生に「神奈川県で教師を目指すなら、地域の事情にも明るい横浜国立大学が一番」と勧められたことが、きっかけです。特別支援教育の専門コースがあるという点も魅力で、大きな理由でした。

萱野:私は、「小学校の教員免許を取得できる国立大学」という点が決め手になりました。高校の先生から「がやっこ探検隊」(横浜国立大学が横浜市保土ケ谷区と連携して行っている学外活動。区内の小学生と教育学部の学生が、1年間の活動を通して交流する)のことを聞いたことも、大きな理由です。学外活動・課外活動が充実していることも、横浜国立大学の魅力だと思います。

井出:僕は長野県出身で、地元の大学も検討したのですが、地方と首都圏では教育観や進路指導に大きな違いがあると知り、自分自身の視野を広げるために異なる地域で学ぼうと思い立ちました。志望校を何校かに絞った中で、決め手になったのは名前です(笑)。「横浜+国立」って、すごくカッコいいですよね。

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—————「がやっこ探検隊」以外にも、課外活動に参加されていますか?

井出:家庭の事情で塾に通えない子供たちのための無料の学習塾で、ボランティアとして講師を務めています。

小林:僕も学習塾のアルバイトをしていました。陸上部にも所属して活動していました。

後藤:私は、知的障がいのある大人の方たちの余暇支援サークルに参加しています。一緒にカレー作ったり、遊園地でイルミネーションを見るなどして、楽しく過ごしています。

—————1年次は全員が小学校教員になるのための学習をして、2年次から専門領域に特化されると伺いました。約1年かけて考えてから、コースを選べるんですね。

井出:はい、小学校の教員は全科目を教えるので、1年生の間にいろいろな先生の講義を受けられることがメリットですね。僕はある先生の授業に感動して、国語領域を選択することに決めました。

後藤:私は当初からの志望通り、特別支援教育専門領域に進みました。

萱野:私も入学時から志望は変わらず、小学校・中学校の社会、高校の地理歴史、高校の公民の教員免許を取りました。社会科は高校の教員免許が2つに分かれているので単位数もレポートも多いのですが、論理的に考えてまとめる力がしっかり身に付きます。

小林:僕は入学後に心理学に興味を持ち、心理発達領域(2021年度より心理学領域)に進みました。副免許として特別支援教育も取りました。

井出:僕は小学校と中学校の国語、高校の国語のほかに、高校の書道の免許を取りました。国語科の書写に加えて書道の授業の単位を取ればいいとわかったので、「じゃあ取っちゃおう!」と頑張りました。

実習以外にも、さまざまな実践で「現場力」が鍛えられる

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萱野 里奈さん

—————文学部や理工学部でも教員免許は取得できますが、教育学部で学ぶメリットは何でしょうか?

井出:教育学部は実際の教育現場に触れる機会が多く、自分自身の教育観を固めやすかったです。高校生はまだ未熟な部分が残る年齢なので、僕は勉強を教えるだけではなく、人間性まで養う力を持った教員になりたいと思うようになりました。

後藤:教育学部だからこそ、1年生の時から実際の学校現場での工夫を知ることができましたし、子供の特性を想定して教材を用意し、授業を作っていくことの重要性を学びました。教員採用選考試験の模擬授業でも、教育学部で実践的な授業をたくさん受けたことが役立ちました。

—————横浜国立大学は教育実習の時期が他の大学より少し早く、すべて3年生の秋に終わるそうですね。

萱野:小学校の実習は3年生の春です。

後藤:特別支援教育では小学校での実習の後に特別支援学校の実習を秋に、4年生の4月に中学校、高校のどちらか選んで実習に行く学生が多かったです。

萱野:最初に小学校の実習を経験することで、学校生活のイメージができました。教壇に立って授業をして、中学校の実習の予行演習にもなりました。

井出:小学校での実習は4週間なので、授業時間や1日の流れ、1クラスと関わる時の感覚がじっくり確認できました。おかげで高校での2週間の実習はスムーズに取り組めました。

小林:横浜国立大学は、必ず担当の教員が実習の研究授業を見学にきてくださるんです。ですから、実習先は神奈川県内の学校です。神奈川県出身の僕は母校で実習を行いました。

井出:実習にはすべて同じ教員が来てくださることで、一貫したフィードバックが得られて良かったです。

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小林 優太さん

—————大学が責任を持って支援する体制が整っているんですね。実習で心に残っているエピソードはありますか?

後藤:私は学部附属の特別支援学校(横浜国立大学教育学部附属特別支援学校)で、小学部の児童に遊びを通してルールを学ぶ授業を行いました。実習生3〜4名でメインティーチャーとサブティーチャーの役割を分担し、協力してやり遂げました。文字を書くことが苦手な子供が多いにも関わらず、実習の最後に色紙にメッセージを書いて手渡してくれたことが嬉しかったですね。

萱野:私は中学校の実習で、一歩誤ると信頼関係が崩れてしまいそうな、手がかかる生徒と放課後のふとした会話で「心がつながった」と感じた瞬間があって、「先生っていい仕事だな」と思う出来事がありました。

小林:僕は小学校で6年生を担当しました。女子児童は多感な年齢なので、歓迎ムードというより微妙な雰囲気だったんです。それでも1ヶ月間自分から声をかけ続けたら、実習の最後に「毎朝声をかけてくれてうれしかった」というメッセージをもらいました。「頑張って続けてよかった」と思いましたね。

井出:僕は高校の実習が印象に残っています。授業力が拙くて上手く伝えきれず試行錯誤していたら、クラスの生徒たちが見かねて「こいつを助けなきゃ!」と一致団結して、どんどん質問してくれるようになったんです。それをきっかけに「先生も頑張るから一緒に頑張ろう!」とクラスが盛り上がりました。

—————教育実習以外にも「スクールデー実践」という学外活動で、アシスタントティーチャーとして現場を体験できるそうですね。

萱野:はい、ただ私たちはちょうどコロナ禍で現場に足を運べなくなってしまって…。私はスクールデー実践とは別に、教育ボランティアとして活動しました。教育実習より長いスパンで子供たちと触れられるので、給食の白衣のボタンを1つも留められなかった児童が1年後には3つ留めて帽子もかぶれるようになるなど、成長に気づくことができました。

—————そういったボランティアの機会が豊富にあることは、横浜国立大学が地域の学校と信頼関係を築いてきたことの結果ですね。

きめ細かい支援と学生同士の協力で、採用試験を乗り切る

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井出 廉也さん

—————教員採用選考試験に向けての、大学のサポートはいかがでしたか?

井出:僕はまず、どこの自治体の試験を受験するかを迷いました。高校の教員を目指していたのですが、市立は中学校・高校一括募集で中学校の先生になる確率が高いとわかったので、神奈川県立を受験しました。出身地の長野県の採用選考試験も受験しましたが、内容も試験時間も自治体によって異なりますし、あいにく日程が重なることもあります。過去試験問題や先輩の体験談を含め教育学部の就職支援(教職テラス)が情報をしっかり提供してくれたことで、乗り切れました。

小林:僕も、テキストを先輩から一式譲ってもらいました。面接の前には、心理発達領域の数名で集まって練習できたことが功を奏しました。

後藤:私も、特別支援学校を受けるグループと小学校を受けるグループで分かれて面接の練習をしました。

萱野:私も「がやっこ探検隊」の仲間と情報を交換して、準備しました。

井出:小学校・中学校教員志望でも高校教員の単位まで取る学生が多くいるので、僕のように高校教員を志望する少数派も孤独を感じることがありません。教育学部の就職支援(教職テラス)でも、校長経験者の先生に面接の指導をしていただきました。本番では指導の時と同じ質問がありましたし、お願いしてよかったと思っています。

萱野:私は、教育学部の就職支援(教職テラス)に小論文の添削をお願いしました。校長経験者の先生の視点から、実際の学校現場に基づいたアドバイスをいただけて、とても助かりました。一次の筆記試験についても、出題の傾向をきっちり対策をしてもらえました。模擬授業以外はすべて、学部の就職支援(教職テラス)に頼りっぱなしでした。

小林:僕は模擬授業を主に見ていただきました。左利きなので「板書が生徒から見にくいから工夫するように」というアドバイスもありました。自分では気付かないことも指摘していただいて、ありがたかったです。

後藤:私は大学推薦で一次試験は免除されていたので、面接と模擬授業のみで合否が判定されました。どちらもファーストインパクトが非常に重要で、指導で手厚く見ていただけてクリアできました。

教育学部だからこそ、教育を深く考え広い視野を持つ教員に

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後藤 理央さん

—————教員は負担が大きい仕事として伝えらえることもありますが、どう感じていらっしゃいますか?

小林:教育実習でその大変さを実感して、教員になるのをやめようかと考えた時期もありました。でも高校時代から目指して取り組んできましたから「とりあえずやってみよう、自分の目で確かめよう」と思っています。

後藤:実習や卒業研究で行った学部附属の特別支援学校の先生たちは、本当にやさしい方ばかりでした。辛いこともあるだろうとは思いますが「まずは頑張ってみよう、やってみないとわからない」と考えています。

萱野:現役の先生方の忙しさは実習で感じましたから、不安もあります。でも、ボランティア先の先生が「忙しいけれど、学級を作り上げて卒業させた時は達成感があるし、子供たちと心がつながった瞬間は本当に楽しい」とおっしゃっていました。私はその言葉を信じて頑張ろうと思います。

井出:教育実習で行った学校は、部活動の顧問が4人体制だったり、1人1台端末が完備されていたり、現場がスマートに整えられていたんです。幸運なことにその高校に赴任することになったので、僕はあまり不安を感じていません。

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—————皆さん、これからどんな先生になりたいと考えていますか?

井出:進路など人生に関わる場面で、生徒の挑戦を全力でサポートして、背中を全力で押してあげる先生になりたいですね。たとえ結果がよくなくても、その後のケアまでしてあげたいと思っています。

後藤:私も、子供の「やりたい」という気持ちを尊重する先生になりたいです。私自身もそうですが、家族はつい心配で障がいがある子供の行動を制限してしまいがちです。先生としては子供が興味を持つものにどんどん触れさせて、いろいろな世界を見せてあげたいと思います。

萱野:私は、筋が通った先生になりたいですね。誤っていることは注意し、正しくできた時は褒める、理不尽じゃない先生。それが生徒の安心にもつながると思います。

小林:僕は、児童に積極的に関われる先生になりたいです。教育実習では全くしゃべらない児童もいましたが、みんな先生と関わりたい気持ちは持っているんです。話すのは苦手だけど書くことは得意な児童もいます。コミュニケーションに配慮したいと思っています。

—————最後に、教員を目指している学生を含め、進路を考えている高校生たちにメッセージをお願いします。

萱野:経験から得た反省点を講義での学びと結びつけ、知識と理論の往還を大切にしながら、学んでほしいと思います。

後藤:この横浜国立大学で、いろいろな挑戦の機会をいただきました。経験を増やすことで、本当にやりたいことが見つかると思います。

小林:教師を目指す、真面目でやさしい学生が多くいる環境です。その中で僕と同じように、4年間居心地よく過ごせると思います。

井出:仲間の存在がすごく大きかったです。教員志望の学生同士、しっかり教育について考えることができて、それが現場に活きるはずだと感じています。手厚く支援してくださる先生方の姿も、なりたい教員像に大きく影響しました。

—————皆さんがモチベーション高く大学生活を過ごしてこられたことが、よくわかりました。ありがとうございました。

取材場所:教育学部 第1研究棟1階「教職テラス」
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(2023年3月掲載)

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